【試乗記】AE86 BEV Concept; 『ホントにEVコンバージョン?まるで内燃機関のハチロクに乗っているみたい』(Vintage Club by KINTO)
2024-02-09
今回の試乗はユニークな旧車、『AE86 BEV Concept』です。2023年・2024年と東京オートサロンに出品されたこのクルマは、AE86 LEVINにEVのパワートレーンを搭載した“コンバージョンEV”ですが、その走り味・乗り味はどんなものでしょうか? 豊田市の市街地・ワインディング路を走らせてみました。
著者:ハマやん
クルマ大好き、元トヨタの企画マン。公私合わせて1,800台以上のクルマに試乗。
〔車両概要〕AE86 BEV Concept
〔参考:オリジナル“AE86”の主要諸元〕
全長x全幅x全高・WB・車重;4180mmx1625mmx1335mm・2400mm・925kg
4A-GEUエンジン;1580CC,130PS/6600rpm,15.2kgm/5200rpm
サスペンション前/後;ストラット/5リンクリジット,タイヤ;185/70R13
〔BEV化等の改造〕トヨタ自動車株式会社
①『さもエンジン車に乗っているようなフィールがすごい。回転・音など』
各社の色々なBEVに試乗した経験はあっても、この“AE86 BEV Concept”(以下“ハチロクBEV”)のように、マニュアルトランスミッション付きのコンバージョンEVに乗るのは初めての経験でした。乗る前、担当者に『MT付きEVってどう運転すればよいですか?何か注意点は?』と尋ねてみたのですが、『普通のクルマのように乗っていただいて結構です。』との回答で、特に留意することなく試乗を始めました。
その走り味を一言でまとめると、『これがEVとは思えない。さもエンジン車に乗っているようなフィール』で、発進のためのシフト&クラッチ操作から走行のためのスロットル操作、そして停まるためのブレーキ操作まで、『普通のエンジン+MT車を運転しているのと殆ど違わない回転フィールと音質』で、普通に走り&停まりました。
担当者によると、『普通のクルマとして走行できるようパワトレを造り調整してきました』ということで、このような走行フィール実現のために色々な工夫がなされていると推察しましたが、『BEVでありながらエンジン車のように普通に走れる』クルマという点に、この“ハチロクBEV”の大きな特徴があると思いました。
②まるで“ハチロク エンジン車”に乗っているような走り味
この日の試乗は豊田市の市街地とワインディング路での20kmほどの走行でしたが、どんな場面でも『まるでハチロクのエンジン車に乗っているようだなあ・・・』との感想をもちながらの試乗となりました。
最近のBEVの中には、アバルト500eのように、『走りの面白さや音の楽しさを実現しているクルマ』もありますが、それでもBEV特有の走り・フィールから外れるものではなく、この“ハチロクBEV”のフィールや運転操作とは大きく違っています。
例えば、ワインディング路を走行する際、状況に応じて2速⇔3速⇔4速をシフトチェンジしながら、回転数・出力/トルクを調整しながら走行する・・・といったことは、普通のBEVではできない訳で、そうしたシフト操作の面白さ/喜びを実現している点は、この“ハチロクBEV”最大の特徴だと実感できました。
(補足;エンストはするのか?と思い、半クラッチからスロットル踏まずそのままミートしてみましたが、(当然ながら)ストールはせずクルマは静止したままでした)
③柔らかくはないが、しっかり衝撃を吸収してくれる乗り心地
現代の交通の中で安心して余裕持って走れるためには、ステアリングやブレーキ操作に対するクルマの反応や乗心地の面も大きな要素となってきますが、そうした面でも、この“ハチロクBEV”は、良好な印象を与えてくれました。
街中走行でもワインディング路でも、路面の凸凹や不整に対して、柔らかくはないが、しっかり衝撃を吸収し安定して走行できるクルマでしたし、パワー付きに改造されたステアリングは停止時を除き軽く操作でき、またロールやノーズダイブもよくチェックされていたと思います。
フロアマットや吸音材もないスパルタンな仕様なので、路面からの石跳ね音等は聞こえてきますが、安定感と俊敏さを兼ね備えた運動性能で、ワインディング路をとても楽に余裕もって走ることができました。
④洒落の効いた外観細部と走る機能に徹した内装
“ハチロクBEV”の外観は、見慣れたAE86(3ドアクーペLEVIN)そのもので、低められた車高を除けば特筆すべき点はありませんが、細部に目を移すと『洒落の効いた表現』があちこちに配されていました。
例えば、LEVINエンブレムのEとVの文字をグリーン色に加飾したり、オリジナルはAPEX TWIN CAM16のところをAPEX NON CAM0と表現してあったり、リアウィンドウのオリジナル有鉛or無鉛ステッカーを“電気”と表現してあったりして、このクルマがBEVであることを控えめに洒落た表現で語っています。
室内に関しても、オリジナルAE86を活かしたもので特筆すべき点はありませんが、バッテリー搭載のために2座化されており、またロールバーとバケットシート装着により、“走りに徹したクルマ”というメッセージが伝わってくるインテリアに仕立てられていました。
⑤ワインディング路でとても乗りやすく運転しやすいコンパクトさと軽さ
ワインディング路で面白く、また余裕もって走行できたクルマと上述しましたが、とても乗りやすく運転しやすいクルマでもありました。
それは、このクルマのEV+MTパワートレーンの仕立てによる運転(加減速)の自然さ、そして重量配分(50:50に近いらしい)や足回りのセッティングによる安定感と曲がりやすさが大きな要因となっているのでしょうが、もう一つあると思いました。
コンパクトで軽量な“AE86のボディ”。全長4180mm・全幅1625mmというコンパクトさ、そしてBEV化での重量増が100kg程度に収められている軽量さ(車両重量1030kg)によって、基本的な運動性能ポテンシャルがある点が、乗りやすさや運転し易さにつながっていると感じました。
〔まとめ〕
▽さもエンジン車に乗っているようなフィール(回転・音)を造り出している点がすごい。『これホントにエンジン+MT車じゃないの?』と質問したくなるクルマ
▽旧車をカーボンニュートラル化できる見本に接することができた ⇒今後旧車が生き延びる道として“EVコンバージョン”は有力な一手かもしれない
▽日本の路でとても扱い易く運転し易い“ハチロク(AE86)”の車体
(mm)(kg) | 全長 | 全幅 | 全高 | ホイールベース | 車両重量 |
---|---|---|---|---|---|
AE86 | 4180 | 1625 | 1335 | 2400 | 925 |
初代86 | 4240 | 1775 | 1300 | 2570 | 1190 |
GR86 | 4265 | 1775 | 1310 | 2575 | 1270 |
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