【試乗記】“旧車”ソアラ。『上品なGTを労わりながらの対話で味わう』体験

2022-08-19

KINTOのハマやんによる試乗記。今回は、1982年式 初代ソアラ 2.8GT-Limitedで名古屋ドライブ。 実は自身も昔同じソアラに乗っていたというハマやん。タイムスリップしてあの頃の思い出に浸りながらも、色々なことを考えさせられたようです。

Vintage Club by KINTOでレストアされた、1982年式ソアラに試乗しました。

シッカリとしたレストア作業で綺麗に仕立てられたソアラは、現代の交通環境の中でも通用する走りで、このクルマの発売時に強いインパクトをもっていたグランドツーリングカーとしての高い商品性の片鱗を確認することができ、また同時に『旧車の魅力とは?』や『クルマの事を労りながらの“対話”』といった事を考えさせてくれました。

著者:ハマやん
クルマ大好き、元トヨタの企画マン。公私合わせて1,800台以上のクルマに試乗。

レストアされた1982年式ソアラGT-LTD

〔写真:レストアされた1982年式ソアラGT-LTD〕
1982年式(昭和57年10月初度登録)・走行88,657km
〔参考:主要諸元〕
全長x全幅x全高・WB・車重;4655mmx1695mmx1360mm・2660mm・1320kg
5M-GEUエンジン;2759CC,170PS/5600rpm,24.0kg・m(JISグロス値)
サスペンション前/後;ストラット/セミトレーリング,タイヤ;195/70HR14サイズ
〔レストア〕新明工業株式会社

①今の交通下でも通用するその走行性能・乗心地

名古屋オフィスの駐車場でエンジンをかけようとキーをひねると・・・、なかなか掛からない。結果、4度目に2.8Lエンジンは目覚めました。

『慎重に乗りなさい!っていう事だな』と自分に言い聞かせてから気遣いつつスタート。

名駅入り口まで近いこともあり、まずは名古屋高速を巡航してみました。

4速ATなので、今のクルマ(多段ATでエンジンの美味しい所を拾って加速させるような)の加速感とは違って、少し貯めのあるフワッとしたフィールで流入し加速していきました。

ギアの変速だけでなくトルクコンバーターの増速で速度を乗せていく感覚です。

ほぼ定速で流れている名古屋高速ですが、ときたま『前が空いて加速が必要になる瞬間』も訪れます。

スロットルを強めに踏み込むと、やはりトルコン、そのあとでエンジン回転アップによる加速となる・・・そんな感じ。

2,000~3,000rpm少し上まで回るとエンジン音が気持ちよいビートを奏でました。

『そうそう。これが直6の5MGエンジンなんだよね。』加速時の音は低く押さえられ、排気音なのか?上品なビートが印象に残りました。

名古屋高速の環状線を3周走行したのですが、結構目立っている感じ。

後ろからついてくるクルマや追い越され時に視線を感じる事が結構ありました。

また、たまたま出会ったナンバープレート“70”番の70SUPRAの人たちもこちらを見ながら会話しているように思われました。

名古屋高速の走行で感じたのは、『労わりながら』ではあるものの、『今の交通状況に十分ついていける性能である』ということ、また乗り心地や操舵感覚も、さほど不自由・違和感を感じるものではないということで、発売時点の諸性能とレストア作業の確かさを確認できた感じがしました。

レストアされた1982年式ソアラGT-LTDのエンジンルーム

②乗り心地は時代を感じさせるが快適で運転し易い

名古屋高速環状線から東新町ICで下り市街地を走ってみました。(とても目立ちます。信号待ちでは写真も何回か撮られました)

フェンダーミラーによる後方・側方確認が不自由な点はありますが、運転席からの見切り・視界がとても素晴らしく運転し易いクルマだと感じました。

広小路通~新栄~千早~100M道路と、家の近所で路面状態をよく知っている路で乗心地を確認してみましたが、やはり、今のクルマのようにはいきません。

『フラットでスムース、路面不整に対してしなやかに対応』している感じの乗り心地が好みの私的には、『やっぱり時代は感じさせるなあ。

路面の凸凹や不整を(ショックは吸収されているものの)直接伝えてくる』点で、ちょっと気になる側面ではありました。

とはいえ、コンパクトなサイズ、手の内感あるボディ見切り、全周良好な視界が相俟って、街中でも運転しやすく、現代の交通状況下でも、さほど気遣わず乗れる『旧車』だと思いました。

③細長いプロポーションと小さなタイヤ/ホイールだが・・・

写真を撮るためにイオンタウン千種の屋上駐車場に行きました。(ここでもとても目立っていました。また写真撮られました)

前後左右からクルマを眺めながら写真撮影。

事前には、『細長いプロポーションでタイヤも14インチと小さいからなあ・・・。スタイル的にはどうなんだろう』と思っていたのですが、いやいやなかなかで、このソアラの特徴である端正で上品なスタイルは、今のクルマの中に並べてみても、存在感を放っていると思いました。

レストアされた1982年式ソアラGT-LTDの外観

④当時最先端の装備類:今でも通用するものは?

今のクルマでは当然の標準設定となっているADASや安全装備類については、当然ながら見劣りし、またナビゲーションの類いも装備していない82年式のソアラですが、当時最先端だった装備類の中には今でも通用するものがあると思いました。

具体的には、エアコン(Micro Processed Automatic Air Conditionerと大きく表記されている)・デジタルメーターなどで、温度設定がデジタルで表示される点や速度(数字)、エンジン回転数(グラフ)が直感的に視覚に入ってくるメーターは今でも価値ある装備だと実感できました。

レストアされた1982年式ソアラGT-LTDの内装

⑤自分自身の記憶(84年式2.8GT)との対比を試みる⇒『記憶の中で美化された期待値のようにはいかないが・・・』

ソアラは一時自分のクルマとして乗っていたクルマなので(84年式2.8GT・6年間保有)、自分の記憶にあるソアラの印象と今回乗ったそれを対比させ、また事前の期待値と乗った印象を比較してみたいと思います。

正直に言うと、『こんな程度だったっけ。やっぱり時代感じさせるなあ』と感じた点はいくつかありました。

それは例えば、

>動力性能;もっと速く、周りを置いていける性能だった筈
>乗心地;もっと柔軟で、上品かつシッカリした乗心地だった筈
>操舵;もっと軽くスムースなステアリングだった筈

といった項目です。

これらは、今のクルマとの対比で特に感じてしまう点で、40年物のソアラに対しては、差し引いてみなければならないものなのでしょうし、また自分の中にある『記憶の中で美化されたソアラの乗り味』と現実との差異なのかもしれません。

しかしながら同時に『事前に思っていたより良かった、凄いなあ』と感じた点もありました。

それは例えば、

>外観スタイル;今見ても端正で上品なフォルムで存在感あり
>全体を貫く上品さ;外観内装に加えて乗り味にもある上品さ
>快適性と運転のし易さ;視界や空調等は気遣う必要なし

といった項目で、これらは初代ソアラの持つ特徴といえるかもしれません。

レストアされた1982年式ソアラGT-LTDの内装
1984年式ソアラGT-LTD

〔写真〕1984年式の自分のソアラの写真。この年式ではドアミラーになっていた。
タイヤ/ホイール(15インチ)が小さいのと全体に細長い点を除けば、今でも魅力的なフォルムではないでしょうか?

自分自身の記憶を書かせていただければ、愛車ソアラに乗っていた当時、実家のある奈良と名古屋の間を何度も往復したのですが、道中、東名阪道で『ソアラってホントに良い乗り味だなあ。高速走行で気持ちよいクルマ。

この先もずっとソアラを乗換えていこう・・・』とよく思っていたものでした。

(現実には、自分自身のライフステージ変化やソアラの変質もあって、そのクルマは約6年乗って後輩に譲り、その後ソアラを買うことはありませんでしたが。)

▽『旧車ならではの価値』を考えてみた⇒『よりクルマを労り、主体的に関わってドライビングしている感覚』

上品で快適なグランツーリスモとして、大変印象的な体験となった40年前のソアラ試乗でしたが、ふと『旧車ならではの価値って何だろう?』と考えました。

『旧車ならではの価値・魅力』としては、例えば『自分が昔乗っていたクルマだから』や『憧れのクルマだったから』等といった所謂ノスタルジーは否定できませんが、それだけでもないように思われました。

今回のソアラでは、直6エンジンの音や感触、路面とのやりとりで伝わってくる振動・音、それら全体の乗り味・・・と、『旧車ソアラ独特のもの』を感じながらの試乗でしたし、その独特さが、『今のクルマみたいに洗練されていないが、その分個性的』とも表現できるように感じました。

また、『安全快適機能・便利機能・ドライバーサポート機能等が今のクルマのようにはいかない』、つまり色々な面で運転に手がかかるネガティブポイントも、裏返せば、そのために『より主体的に運転に関わっていないといけない=ちょっと苦労しながら乗りこなしている』というポジティブな気持ちになれるのかもしれません。

(これは個人差ありそう。ですが、古いクルマが好きな人は色々な点で手がかかる・苦労するという点も含めてそのクルマが気に入っているように見受けられるからです)

『クルマとの対話』で表現すると、古くて不完全なクルマほど、『よりクルマを労りながら“これ大丈夫?”と、色々な操作で探りながら運転する』的な面があり、それは、クルマとのより濃密な対話といっても良いように思われます。

基本的には、クルマは日々技術進化しており、新しいクルマの方が古いクルマよりも優れている訳ですが、こと『クルマを操る喜びや楽しみ』という側面で見た場合、どうなんだろうなあ・・・。

『旧車ならでは』の『よりクルマに主体的に関わってドライビングしている感覚』は、今のクルマでは、退化しているとは言えないでしょうが、今~今後のクルマづくりにおいては課題の一つなのかもしれない・・・。

そんな事も考えた『82年式ソアラの試乗』でした。

レストアされた1982年式ソアラGT-LTDの外観

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