【試乗記】セリカ1600GT(Vintage Club by KINTO)
2023-12-27
KINTO の旧車プロジェクト『Vintage club』の一環としてレストアされた“旧車”試乗。今回は初代セリカのクーペ1600GT(1973年式)です。通称『ダルマセリカ』を現代の交通の中で走らせた感想はどんなものだったでしょうか?
著者:ハマやん
クルマ大好き、元トヨタの企画マン。公私合わせて1,800台以上のクルマに試乗。
〔車両概要〕トヨタセリカクーペ1600GT 1973年式
〔参考:主要諸元〕
全長x全幅x全高・WB・車重;4160mmx1600mmx1310mm・2425mm・980kg
2T-GRエンジン;1588CC,145PS/6400rpm,110PS/6000rpm,14.0kgm/4800rpm(JISグロス値)
サスペンション前/後;ストラット/4リンクリジッド
〔レストア〕新明工業株式会社
①スペシャルティカーらしい特別感ある外観スタイル
レストアいただいた新明工業で出会ったセリカは濃いイエローに塗装され、とても目立つクルマ。約50年前のクルマだけに今とは全く違うプロポーションで、全長4160mm・全幅1600mmと現代のコンパクトクラスと比較しても小さく感じるものでした。
それでも、特別感あるのは元祖スペシャルティカーゆえでしょうか? 外観だけで、他のクルマとは異なる“何か”を感じさせてくれました。
②ドレスアップで迫力ある外観
このセリカはドレスアップアイテムとして、濃いイエローの塗装だけでなく、リアスポイラー・サイドボディ下部のストライプ・ワイドタイヤが装着されており、そのために、迫力あり、またスリークな外観になっていると思いました。
旧車にドレスアップが相応しいかどうか?は色々な意見があるでしょうが、このセリカに関しては、旧車プラスαの魅力が表現されているように思われました。
③時代を感じさせるが信頼感あるパワートレーンと乗心地
試乗は豊田市内の一般道で実施し、そのあと豊田から名古屋まで高速道路で移動したのですが、特に問題なく高速道/一般道の流れに乗って走ることができました。高速道路区間でも、(今のクルマより高回転ながら)時には流れをリードするような走りもでき、全体に信頼感あるパワートレーンではないか?と印象付けられました。
動力性能自体は、50年前のクルマゆえにそれなりのものとは感じましたが、回せば力感あるフィールで、新車時はさぞ気持ちよかったんだろうなあ・・・と想像させられました。
また、乗り心地については固めで、路面からの突き上げはそれなりに伝えてきますが、この外観(ドレスアップ仕様)のこの年式のクルマとしては、こんなものかなあ・・・とも思えました。いずれにしても、路面変化に対する足回りの信頼感のようなものは感じられました。
④ズラッと並んだメーターがその時代の自慢
運転中色々な情報を確認する計器盤ですが、このセリカの時代は、速度・エンジン回転・燃料のみならず、油圧・電流など色々な情報がメーターに示され、そのメーター数が多い方が、よりスポーティで特別なクルマ・・・“〇眼式メーター装備!”・・・という風に告知されていました。
このセリカGTでも多数のメーターが並んでおり、自慢のタネになっていたのだろうと思います。
⑤意外と運転に気遣わないクルマ
ソレックスツインキャブレターを2連装着したクルマ・・・というと運転し難そうな感覚ですが、このセリカは、意外と運転に気遣わないで済むクルマかな?と思いました。
ギアシフトはちょっと曖昧で横方向が分かりにくい面があるものの、慣れれば大丈夫な感じでしたし、ノンパワーステアリングではあるものの、少しでもクルマが動いていればむやみに重くはないなど、運転の基本操作に関わる点はまずまずで今の交通環境にも適合するものと感じました。
⑥郊外のワインディング路で気持ちよく走れた
ワインディング路は豊田市近郊で試してみましたが、信頼感あるパワートレーンと足回り、さほど気遣わない運転操作が相まって、気持ちよく走行できました。
この1600GTはセリカの中でも高性能スポーツ版で、そのためトランスミッションは5速マニュアルのみです。
一速から二速・三速と変速し走行していると、クルマを動かしている実感とともに、車速や運転状況に合わせて自分でギアを選択するという行為に、何か原点的なものも感じました。
▽いたわりながら、今出せる性能の範囲で楽しむ=『旧車の楽しみ方』
“旧車”の楽しみ方には、綺麗に保存する・イベントに出場する等、色々なものがあると思いますが、走行という面では、『いたわりながら、今出せる性能の範囲で楽しむ』のが重要ではないでしょうか?
このVintage Clubで様々な“旧車”に試乗してきましたが、その性能をフルに発揮するような走行ではなく、その個体が持っている性能の範囲を探りながらの走行で、『性能の範囲を探りながら・・・』という点に“旧車”を走らせる面白さがあるのではないか?と感じたからです。
▽スペシャルティカーとしての存在感は今もある
今では、ほぼ絶滅(危惧)種と表現せざるをえないスペシャルティカー。日本でのスペシャルティカー第一号とされる初代セリカ(ダルマセリカ)に乗ってみて、その特徴や存在感を改めて知ったような感じがします。
『パワートレーンや足回りなどを普通のセダン(カリーナ)と共用しながら、外観スタイル・内装・仕様装備・グレード体系などによってセグメントされたスペシャルティカー(セリカ)』は、効率よい魅力的商品づくりの典型だったと言えそうに思えます。
そして、『中身は普通のセダンと同じ』かもしれないが、商品としてこの初代セリカが放つ存在感は大きなものがあると感じられます。