【試乗記】セリカGT-FOUR(Vintage Club by KINTO)

2024-01-10

KINTO の旧車プロジェクト『Vintage club』の一環としてレストアされた“旧車”試乗。今回は6代目セリカの高性能版GT-FOUR(1994年式)です。ツインカムターボエンジンを搭載し4WD化された『GT-FOUR』は、当時参戦していたWRCのベースマシンとしての役割も担っていたわけですが、現代の交通の中で走らせた感想はどんなものだったでしょうか?

著者:ハマやん
クルマ大好き、元トヨタの企画マン。公私合わせて1,800台以上のクルマに試乗。

〔車両概要〕トヨタセリカGT-FOUR 1994年式
〔参考:主要諸元〕
全長x全幅x全高・WB・車重;4420mmx1750mmx1305mm・2535mm・1380kg
3S-GTEエンジン;1998CC,255PS/6000rpm,31.0kgm/4000rpm(JISグロス値)
サスペンション前/後;ストラット/ストラットタイヤ;215/45R17
〔レストア〕新明工業株式会社

セリカGT-FOUR

①スペシャルティカーらしさ+高性能スポーツらしさ

レストアいただいた新明工業で出会ったセリカGT-FOURはブラック色で、全体に流麗なスペシャルティカーらしい雰囲気を漂わせつつも、フロントエアインテーク等のスポーツアイテムによって、高性能スポーツらしさ・存在感が表現されているように思われました。

セダンやクーペではない特別さを持ちつつ、本格スポーツカーとも一線を引く存在である『スペシャルティカー』のパイオニアであるセリカの“6代目”として、完成型のカタチ・スタイルとも言えそうな雰囲気を持っているクルマで、車両のプロポーションやデザイン要素等、今の基準で見ても自然で格好良いクルマと思われました。

GT-FOURは、その6代目セリカのトップオブザレンジとして、ツインカムターボエンジンを搭載し4WD化された、スポーツモデルですが、そのキャラクターは、様々なスポーツアイテムによって、外観スタイルとしてもうまく表現されているように感じられました。

セリカGT-FOUR

②パワフルだが普通に乗り易いパワートレーン。今とは異なるターボパワー味付け

試乗は豊田市内の一般道で実施したのですが、ほぼ交通の流れに乗って、時々加減速してみる・・・的な走り方をしました。

255馬力・31.0kgmを発揮するエンジンの力に不足があるはずもなく、現代の交通の流れに乗って、また交通の流れをリードして走ることができ、そのパワフルさを体感できました。が、このエンジンでより印象的だったのは、その扱いやすさで、『意外と乗り易いんだね!』という言葉が何度も浮かんできました。

時代を感じさせるのは、ターボによる力の出方で、現代の全域or低速域からターボでモリモリ力を出すエンジン・・・とは大きく異なり、上の方まで引っ張って回してみると、高回転(具体的には4,000rpm以上という感覚)域になって、そのターボパワーの価値を発揮する・・・そんなフィールの3S-GTEエンジンでした。

とはいえ、そうやってターボパワーの炸裂する領域を使用したくなる場面は、そうそうあるわけではなく、その意味では、それ以下の扱いやすい回転域で走行している限り、『乗り易い』クルマでいる・・・そんな存在と思いました。

セリカGT-FOUR

③操作系やスイッチ類等も今に通じるもの

3S-GTEエンジン+5MTによる走行が、今の交通事情に適合し(=普通に走行できる)30年という時代差を感じさせないものという要素は、運転操作や各種スイッチ類にも当てはまり、少しクラッチが重めな事を除けば、運転操作は今のクルマと違うところはなく、また空調やウィンドウ等のスイッチ類についても、その操作は今のクルマに通じるものがあり、旧車だからといって気遣う必要は殆どありませんでした。

Vintage club by KINTOという企画のおかげで、様々な旧車に乗らせていただいていますが、その中では、70年代のクルマと90年代のクルマは明らかに違っており、後者に関しては、今から30年くらい昔にも関わらず、『今のクルマとして扱ってもほぼ問題ない』もので、70年代から90年代にかけてのクルマの進化度合いの大きさを意識せざるを得ない感じがします。

④乗心地や耐久性の感覚にトヨタ車らしさを感じさせてくれるクルマ

当時最強の4気筒ツインカムターボエンジンを搭載した4WDスポーツ車ということで、乗り心地はそれなりにハードかな?と予想して乗りましたが、その予想は杞憂に終わりました。街中~郊外での乗心地が、意外にも良かったからです。

乗り心地面では、高性能スポーツというよりスペシャルティカー・ハイパワー版といった印象で、少し硬さはあるものの、全般には良好なものでしたし、30年前のクルマとしてはボディがしっかりしている印象がありました。

高性能スポーツ車であっても、乗り心地の悪くないクルマ、そして何十年経っても使えるクルマ自体の耐久性感覚など、『トヨタ車の美点』が現れているのではないか?と感じました。

セリカGT-FOUR

⑤郊外のワインディング路で4WDスポーツの片鱗を感じとる

ワインディング路は豊田市近郊で試してみましたが、扱い易くパワフルなエンジンと4WDによって安定感ある走行ができました。

後ろから押し出される感覚については殆ど感じ取ることができず、“4WDらしさあふれる”とは言い難い感じですが、それでも、安定して路面をとらえている感覚など、FWDとは一味異なる4WDらしさが走り味のポイントになっていると思われました。

また、当時のスポーツ車として常識的な5速マニュアルTMオンリーのクルマであるGT-FOURを動かしていると、クルマを動かしている実感とともに、車速や運転状況に合わせて自分でギアを選択するという行為に、何か原点的なものも感じました。

セリカGT-FOUR

▽GT-FOURはツインカムターボ+4WDで『セリカ』のスポーツモデル完成形

このモデルはセリカの6代目ですが、セリカ自体は次の7代目で生産中止となりました。7代目セリカは、4WDをやめFFだけになったモデルですが、その関係もあり、もはやGT-FOURは造られませんでした。

『セリカ』は、スポーツ方向の商品バリエーションも持つスペシャルティカーでしたが、FR時代はツインカム搭載が、FF時代はGT-FOURが、それぞれのスポーツモデルバリエーションとして存在していました(除く7代目)。

GT-FOURは、セリカ自体の進化に合わせて、ST165⇒ST185⇒ST205と進化してきましたが、このGT-FOUR(ST205)は、FFセリカベースGT-FOUR3世代の最後を飾った完成形といえそうな存在です。

セリカGT-FOUR

▽第一期『WRC(ラリー)のTOYOTA』の立役者たるセリカGT-FOUR

セリカGT-FOURはWRC(ラリー)での活躍と共に語られるべきクルマです。 1970年代から1999年までの第一期WRC挑戦において、トヨタは44回勝利しているのですが、そのうち31回はセリカGT-FOUR(3世代)によるもので、GT-FOURはトヨタのWRC挑戦における立役者だと言えると思います。

▽現代の4WDスポーツ“GRヤリス”とは似た背景。真逆のアプローチ

今回のセリカGT-FOUR試乗にあたって、GRヤリスに乗って試乗場所に向かいました。似たような背景・思想(WRC/ラリーとの関係)を持つクルマなので、何か感じるところがあるだろうと思ったからです。

性能・乗り味等は、30年前のGT―FOURと比較してもさほど意味はありませんが、似た背景を持つ2車に連続して乗ってみて色々な事を考えさせられました。

>乗り味・走り味は、GRヤリスの方がよりスポーツカー的。精密感も高い

>クルマ全体の雰囲気・内外装・装備等については、GRヤリス=よりラリーマシン的で、セリカGT-FOURは、高性能版スペシャルティカー的雰囲気が強い

GRヤリスとセリカGT-FOURは、WRCに関係したクルマ(ベースマシン)という意味で、共通した位置づけを持ったクルマかもしれません。が、乗ってみて、クルマづくりの思想・考え方が大きく違っているように思われました。(もちろん時代背景・会社の状況の違いといった様々な要素はあるでしょうが)

具体的には、セリカGT-FOURが、WRCのために市販車をベースに競技車を仕立てるという造り方(一般的な手法)なのに対して、GRヤリスは、WRCやラリー・モータースポーツ車両であることを出発点に、競技者の関与も受けながら開発・仕立てられた市販車という造り方で、真逆のアプローチなのではないか?という感じ・・・それが2車に乗ってみて感じた興味深い点でした。

セリカGT-FOUR

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