【試乗記】80スープラ『現代のスポーツカーとして扱っても充分』(Vintage Club by KINTO)
2024-01-10
KINTO の旧車プロジェクト『Vintage club』の一環としてレストアされた“旧車”試乗。今回は2002年式の80スープラです。セリカに6気筒を搭載した“セリカXX”に始まり、スープラに改名され70⇒80と発展/スポーツカー化を遂げたセリカスポーツ系車種の最終進化型ともいえる80スープラですが、現代の交通の中で走らせた感想はどうだったでしょうか?
著者:ハマやん
クルマ大好き、元トヨタの企画マン。公私合わせて1,800台以上のクルマに試乗。
〔車両概要〕トヨタ・スープラRZ 2002年式
〔参考:主要諸元〕
全長x全幅x全高・WB・車重;4520mmx1810mmx1275mm・2550mm・1510kg
2JZ-GTEエンジン;2997CC,280PS/5600rpm,46.0kgm/3600rpm
サスペンション前/後;ダブルウィッシュボーン(前後とも)
タイヤ;235/45R17(前),255/40R17(後)(試乗車は235/40R18,265/55R18)
〔レストア〕新明工業株式会社
①『20年も前のクルマとは思えない。性能・乗り味・操作性』
いきなり“結論”めいたことから感想を始めますが、この80スープラに乗ってみて、最も印象的だったのは、性能・乗り味・操作性といったクルマ全体に関わる項目について、『とても20年も前のクルマとは思えない』事でした。
現代の交通の中で簡単に流れをリードできる動力性能、安心して踏み・曲がれる、ブレーキ性能・コーナリング性能、そして運転に特に気遣う必要のない運転操作系や装備類など、乗っていて『20年という年月を忘れさせてくれる』性能やフィールがあり、今回は名古屋市内から豊田まで、色々な路を試乗したのですが、高速道路でもワインディング路でも市街地走行でも、常に余裕を持ってクルマを操ることが出来ました。
その要因は、走行距離13万6千キロの個体ですが、大事に乗られてきたクルマだろうこと、そして、80スープラというクルマの持つ性能・乗り味のレベルの高さ、またスープラの耐久性の高さ、これらが相まっての事だと思いました。
②常にパワフルで余裕持って走行できるパワートレーン。燃費は・・・だが
『とても20年も前のクルマとは思えない』感覚の80スープラでしたが、最大の要因は、やはりこのパワートレーンにあると思いました。当時のトヨタで最強の3リッターツインカムツインターボエンジン“2JZ-GTE”と6速マニュアルTMによる走りは、例えば、名古屋高速の名古屋駅インターから流入し短い距離の間に3~4車線右に移らなければならない・・・といった状況でも、2速・3速で余裕ある車線変更が可能で、安全に走行できました。
また、郊外に出てグリーンロードの登り下り区間でも、常に安定した加減速&コーナリングが可能で、まるで現代のスポーツカーを運転しているような気持ちになりました。
エンジンの力の出方としては、超低速トルクもそこそこ確保されてはいるものの、やはり3,000rpm~5,000rpmでのトルク感・盛上りが気持ちよく、出来れば積極的にシフトダウン/シフトアップして乗りたくなるクルマだと思いました。
燃費は計測しませんでしたが、相応にガソリンは消費するようで、燃料計の針は結構早いペースで下がっていき、この辺りは現代のクルマとの違いだなあと感じさせられました。
③素直なステアリングフィールと若干ファームな乗心地。剛性感しっかり
現代の交通の中で安心して余裕持って走れるためには、ステアリングやブレーキ操作に対するクルマの反応や乗心地の面も大きな要素となってきますが、そうした面でも、この80スープラは、良好な印象を与えてくれました。
遊びがなく、ちょっとしっとりした感触のステアリングは、曲げれば曲げただけ曲がってくれ、ブレーキも現代のクルマの感覚で踏めば、踏み方/ストロークに寄って減速してくれ、また乗心地も、少し硬さを感じつつも、スポーツカーとして妥当なレベルのフラットなもので、そうした要素の総合として、どんな路・交通状況でもリラックスしつつ余裕持って走れるクルマになっていると思われました。
KINTOのVintageクラブには70年代からこの2002年式80スープラまで様々な年式のクルマが在籍しているのですが、70年代・80年代のクルマは、やはり乗り味や剛性感等で、今のクルマとは大きく違っており、走行もある種の気遣いをもったものになりますが、このスープラではそうした気遣いが不要で、今のクルマとして扱ったとしても何に問題もない・・・そんな時代性の違いを感じさせてくれる乗り味になっていると思います。こうした乗り味の違いは、サスペンションやステアリング系、ブレーキ系など色々な構成要素によるところも大きいと思いますが、全体として感じるボディ剛性の感覚が全く異なっており、ボディ剛性のシッカリ感が80スープラの走り味に大きく寄与しているのではないか?と思われました。
④ADASや安全装備は完備されていないが、普通には不足ない装備類
20年前のクルマなので、ADAS関連装備や安全装備は完備されていませんが、エアバッグは装着されていますし、普通に乗っている分には不足ない装備類と思いました。
パワーウィンドウや電動可倒ドアミラーはタワーパーキング入出庫等でやはりあると便利ですし、オートエアコンも空調に気遣わずに済みラク。もっと言えば、パワーステアリングによって、街中走行や車庫入れもラクに行えるようになっています。
現代のクルマのようにレーダークルーズで追従走行したり、周辺監視により注意喚起や運転アシスト・・・という訳にはいきませんが、基本的な運転操作は自分でやると割り切ってしまえば、必要充分な装備類・操作系だと感じました。
⑤気になる点は・・・シフトフィールと燃費くらいか?
この80スープラに乗っていて、気になった点は、特に大きなものはありませんが、マニュアルTMのシフトフィールと燃費、そして乗心地がもう少ししなやかならなあと感じた事くらいでした。
独ゲトラグ社との共同開発である6速TMですが、全体に“もう少ししっとりとしたフィールなら良いのになあ”と感じさせること、そして、時々1速2速が入りにくいという点が気になりました。
燃費は上述したとおりで、気持ちよく走っていると燃料ゲージが見る見るうちに下がること、そして乗心地については、スポーツカーとしては許容レベルながら、全体にもう少ししなやかさがあれば(路面への当たりがもう少し柔らかければ)良いのになあ・・・と感じました。(但し、このクルマが脚を純正から変更している事、タイヤが17から18インチに変更されている事も要因と思われます)
▽セリカ⇒XX⇒スープラとスポーツ方向に進化してきた最終完成形
トヨタ・スープラと独立車名になった70・80スープラですが、元々はスペシャルティカー“セリカ”の派生モデルで、セリカのフロントボディを伸ばし6気筒エンジンを搭載した“XX(日本名)”がルーツです。下表にあるように、60⇒70⇒80とディメンジョンをGTからスポーツ方向に変更し、より短く・幅広く・低くしたのがこの80スープラ。搭載エンジンも当初の高級車用6気筒からツインカム⇒ツインカムターボ⇒排気量アップしスポーツカー化を図りました。また80では6速のマニュアルTMも(日本の乗用車で)初めて搭載されました。
80以降の歴史は皆さんご存じのとおりで、トヨタのスポーツカー不在時代を経て、2019年に再度登場したのがGRスープラ(90)です。80以降は一旦途切れた歴史・・・そういう意味で、セリカから発展してきたスポーツ方向進化の最終完成形が80スープラと言えそうです。
(mm) | 全長 | 全幅 | 全高 | ホイールベース |
---|---|---|---|---|
60スープラ | 4600 | 1690 | 1315 | 2615 |
70スープラ | 4620 | 1745 | 1300 | 2595 |
80スープラ | 4520 | 1810 | 1275 | 2550 |
▽性能や耐久性(感)など、この80スープラの“カルト的人気”・“高値”が理解できる
80スープラは、映画“ワイルドスピード”で使われた事もあり、カルト的な人気を持ち、今でも高い価格で取引されているクルマです。今回試乗してみて、その性能や乗り味、また耐久性(感)など、今でもスポーツカーとして使用し、場合によってはチューニングして乗ってみたいと思わせるものがあると実感でき、その人気や高値取引のベースにあるものを理解できたような気がしました。
▽Vintage Clubの事務局スタッフが日常的に乗っていると“らしい”クルマ
『古いクルマに乗っている気がしない』という感想は、Vintageカーとしては必ずしもポジティブなコメントではないかもしれません。が、80スープラは、動力性能・乗り味・操作性から、『20年前のクルマに乗っている気がしない』ことが最大の印象でした。
ふと思った事は、このクルマはVintage Clubの事務局スタッフが日常的に乗っていると“それらしい”のではないか?という感じ。すなわち、明らかに古いクルマだが、日常的使用に何も不自由しないクルマ、そんな80スープラを乗っているのがVintage Clubスタッフに似合っているのでは?と思いました。
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