【試乗記】初代セルシオB仕様(Vintage Club by KINTO)

2024-01-10

自動車研究家・山本シンヤさんから車両提供いただきKINTOの“旧車”プロジェクト『Vintage Club』のラインアップに加えられた初代セルシオ。1989年に発売され世界中のプレミアム車に大きなインパクトを与えた諸性能を今振り返ってみるとどうなのか?豊田市内で一時間強試乗させていただきました。

著者:ハマやん
クルマ大好き、元トヨタの企画マン。公私合わせて1,800台以上のクルマに試乗。

①“静かな空間”。エンジン音・遮音だけでなく細かい音まで配慮されている

イグニッションキーを回して最初に思ったのは、“静かなクルマだなあ”ということ。スターター始動~アイドリングでは、どこか遠くでエンジンが回っているような感じ。走り出してもその静かさは変わらず、街中~高速~ワインディング路のどこでも、終始、静かな空間の中で試乗することができました。

エンジン回転数が多くの場合1,000回転台に保たれている事、エンジン等、音の発生源が静かな事、そして車両の遮音が緻密にされている事などによるものでしょうが、“内燃機関の車両としてはとても静かなクルマ”で、印象的でした。

また、走行に関係する“音”だけでなく、各種スイッチ類の操作音やウィンカーリレーの操作音といったものまで静かに造られており、“静かなクルマを造ろう”とした想いの強さを痛感させられました。

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②凸凹や路面不整を伝えてくるが、うまくいなしている乗心地

次に印象的だったのは乗心地。このセルシオはB仕様で、ピエゾTEMSを装備したクルマですが、そのためか?“ふんわり・・・”というより、“すっきりした・・・”という表現の方が似合う感じがしました。

路面の凸凹や不整に出会うと、その存在は伝えてくるが、ショックや音は上手く精緻にいなしている感じで、基本的には良好な乗心地が維持されており、プレミアムな上級サルーンに相応しいものになっていると思いました。

曲がりに関しては、クルマの性格からワインディング路をガツガツ走るような走り方は似合いませんが、少し速度を高めに保っても何の不安もなく走行でき、素直で正確なステアリングレスポンスや車両姿勢、全体の走り易さ等に、このクルマ&この個体の基本性能のシッカリ度合いが現れているように思われました。

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③動力性能は、今となってはまずまずなレベル(極めてスムーズだが)

現代の交通の流れの中での動力性能は、不足はないが、大きな余裕を持つものでもない・・・今の基準では“まずまずなレベルだなあ”と感じました。

4速ATとエンジンの組合せのためでしょうか?変速して加速するよりも、トルクコンバーターによって加速させる面が強く感じられ、そのフィーリング差が今のクルマとの違いにつながっているように思われました。

エンジン回転数を2,000~3,000~4,000と上昇させると、軽い音の上昇と共に加速していきますが、そのフィールはどちらかというとマイルドなもので、やはり動力性能よりもスムーズさの方が特徴であり、(踏めば速くは走れるが)“静かさ”と“スムーズさ”が今に通用する動質上の魅力と改めて認識させられました。

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④視界良く基本性能にも優れる=走って小さく感じられ、乗り易いクルマ

セルシオはショーファードリブンも想定されるクルマのため、全長約5M・全幅1.82Mと日本の街中では少し大きなサイズですが、路上では、実際のサイズよりも小さく感じられ、街中~高速~ワインディング路のいずれでも、“乗り易さ”を感じました。

その理由ですが、全方向に視界がよくクルマの見切りが分り易い事、基本性能が優れている点、運転操作に対するクルマの反応の素直さ、といった色々な要素の組み合わさった総合的なものではないか?と推測されました。

“走って小さく感じる”クルマとは、運転操作とクルマの動きに齟齬やタイムラグがない・・・運転者とクルマとの一体感が強いクルマとも考えられ、そこにはクルマを構成する色々な要素が関係している・・・それら諸要素のレベルが高いのが、このセルシオではないか?と思いました。

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⑤各種操作系や視認系のクォリティ感がハイレベル

1991年式のクルマなので、現代のクルマでは常識の安全・周辺監視装備やナビゲーション等はありませんが、トヨタ/LEXUSのフラッグシップとして当時の最新鋭/上級装備が装着されています。

また、仕様装備が豊富なだけでなく、個々のメーターの視認性・見え方や空調・オーディオ等の操作系や操作感がとても上質なもので、見映え品質や操作品質の点で細部までクォリティを追及したクルマであることを物語っていると感じました。

具体的には、メーターパネルの見え方や、オーディオ/空調の操作スイッチの見映え品質や操作感など、今の基準でみても、精緻で上質な感覚があると思いました。

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▽“走る・曲がる・停まる”クルマの基本性能が高いレベルにある

>1991年式のクルマとしては普通のクルマとは段違いの上級車感覚

>特に“走る・曲がる・停まる”基本性能の高さが印象的

>今の交通事情の中で乗っても、基本性能の高さは容易に感じ取れる

▽“新しいプレミアム商品をつくりだそうとした想い”の詰まったクルマ

>“基本性能”から“細部”に至るまで、それまでのトヨタ車とは段違いのレベル

>ウィンカーリレーの音やスイッチ類の操作感覚等まで拘ったクルマづくり

>特に“静かさ”と“乗心地”、“基本性能”に新しい基準作りを目指した感じ

▽LEXUSのブランド価値の原点に触れた感じがする

>静かさ;現行LEXUS商品や“RZ”につながるLEXUSの重要な価値

>乗り味;“すっきりと奥深い乗り味”の原点的存在

>細部までのクォリティ感;内外装のクォリティ感や操作音・操作感など

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〔車両〕1991年式・トヨタセルシオB仕様・走行40,000km+α
〔参考:主要諸元〕
全長x全幅x全高・WB・車重;4995mmx1820mmx1425mm・2815mm・1730kg
1UZ-FEエンジン;3968CC,260PS/5400rpm,353N・m/4600rpm(JISグロス値)
4A/T, サスペンション前/後;ダブルウィッシュボーン,タイヤ;225/60R16
〔レストア〕 新明工業株式会社
〔試乗〕2023年11月1日、豊田市内、約30km走行

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