【試乗記】トヨタスポーツ800(ヨタ8)

2022-08-19

KINTOのハマやんによる試乗記。今回はトヨタスポーツ800に乗ったハマやん。 『設計思想に直に触れられる感じ』がする2シーター・スポーツ車を試乗しその魅力を紐解きます。

KINTOの“旧車”プロジェクト『Vintage Club』でレストアされたクルマ。今回はあのトヨタスポーツ800(ヨタ8)です。『“ヨタ8”に乗ることができる!』・・・少し緊張しつつもワクワクしながら試乗場所に向かいました。

著者:ハマやん
クルマ大好き、元トヨタの企画マン。公私合わせて1,800台以上のクルマに試乗。

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〔外観〕;とてもコンパクトでシンプル。必要なもの以外は何もついていない流線形の外観は、素のスポーツカーとしての魅力を感じさせます。


〔参考:主要諸元〕トヨタスポーツ800(UP15)
全長x全幅x全高・WB・車重;3580mmx1465mmx1175mm・2000mm・580kg
2Uエンジン;790CC,45PS/5400rpm,6.8kg・m/3800rpm(JISグロス値)
サスペンション前/後;ダブルウィッシュボーン/リーフリジッド,タイヤ;155/60R12サイズ
〔レストア〕新明工業株式会社

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〔内装〕;外観同様、とてもシンプルでコンパクトにまとまっています。短いシフトレバーと4眼式メーターが『スポーツカーらしさ』を感じさせます。

①『コンパクトでシンプル』。ミニ2シータースポーツらしさ

試乗場所に駐車されていた“ヨタ8”は、とてもコンパクトで、低い車高(1175mm)も手伝って、地面にうずくまるように停まっていました。

当時のベーシックカー“パブリカ”をベースにした“ヨタ8”は、全長3580mm・全幅1465mmというコンパクトさで(参考;コペンは全長3395mm・全幅1475mm・全高1280mm)、また空力性能を追求した流線形ボディを持つことから、まるで2シータースポーツの原点のような存在感を持っているように思われました。

ドアを開けて室内に乗り込むと、やはり『コンパクトでシンプル』な空間で、必要な操作類と計器類以外は何もなく、操作に迷うような点は何もないように思われました。

一方、スポーツカーとしての要素は、(とても)低い着座位置・視点や短いシフトレバー・眼の前にある4眼式メーターによって表現されており、見て乗り込んだ時点で、スポーツカーらしさを充分味わえるものと感じました。

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〔運転席周り〕;運転に必要な操作類とスポーツカーとして必要な計器類のみが配置されたインパネ。リム部の細いステアリングが“時代”を感じさせます。

②エンジンを掛けて走り出す。意外?にも運転しやすいクルマ

試乗のためにインパネセンターにあるキーをひねってエンジン始動・・・空冷水平対向2気筒エンジンは、即座に回り始め、安定したアイドリングに、このレストア車に対する信頼感のようなものを感じました。

左右ストロークは長めだが前後は短いマニュアルシフトを一速に入れ、クラッチを慎重につなぐと、全く神経質ではないクラッチミートで“ヨタ8”は軽々と動き始めました。

豊田市の市街地~ワインディング路を走って写真撮影場所の鞍ヶ池公園まで往復したのですが(走行距離約20km)、50年以上昔のクルマゆえ慎重なドライビングは必要とはいえ、運転操作自体はラクで、さほど気遣う必要はありませんでした。

この辺りは、“ヨタ8”が、コンパクト乗用車“パブリカ”をベースに、そのコンポーネントを極力流用し、性能は徹底した軽量化と空力で稼ぎ出す・・・という“ヨタ8”の設計思想から来るもので、運転のし易さは、“パブリカ”譲りなのではないか?という気がしました。

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〔リアビュー〕;この角度からも、流線形ボディと必要最小限のモノしかついていないシンプルさが感じ取れるように思いました。

③ 乗心地よく、軽快に気持ちよく走る

豊田市の街中~ワインディング路を2速・3速・4速を使い分けて走りました。

動力性能は、45PS・6.8kg・mという数値が示すとおり、取り立てて速い訳ではありませんが、軽いクルマらしく、軽快な動きが特徴で持ち味のように思われました。

エンジン回転数では、2,000rpm~3,500rpm位が気持ちよく走れる回転域で、また細いリムのステアリングを回すと(パワーステアリング等というものは当然ついていない)軽々と操作でき、ちょっとしたワインディング路を軽快に気持ちよく走行することができました。

(言い忘れましたが、このクルマにはエアコン/クーラーも装着されていないので、気温35度の中では結構きつかったのですが)、サイドウィンドウを全開にして走行風に当たりながら、また木々のセミの声を聴きながらのドライビングは、現代の空調の効いた空間でのそれとは、違った種類の“運転の愉しみ”ではないか?と思いました。

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〔エンジンルーム〕;空冷2気筒水平対向エンジンを搭載するエンジンルームも、またとてもシンプルで必要以外のものはついていない

▽ その『設計思想』に直に触れられる感じがするクルマ

どんなクルマでも『設計思想』があり、そのクルマに触れると、大なり小なり『設計思想』の一端に触れられると思いまが、この“ヨタ8”では、その度合いがとても大きい感じがしました。

当時のコンパクト車“パブリカ”をベースに、そのコンポーネントを極力流用しながら、スポーツ車としての性能は、徹底した軽量化と空力で稼ぐ・・・その『設計思想』が、外観・内装・運転感覚など、クルマのあらゆるところから伝わってくる気がして、全体として、『直に触れている』感じがしました。それだけ、『設計思想』がハッキリしたもので、それをダイレクトに具現化した商品ゆえではないでしょうか?

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〔サイドビュー〕;流線形ボディ+シンプルさをよく表していると思います。

▽ ライトウェイトスポーツの“原点”的存在

“ヨタ8”は、トヨタとして初めて発売された2シータースポーツ車・・・すなわち、トヨタスポーツの“原点”的な意義がありますが、ライトウェイトスポーツ車としても“原点”的な存在だと思いました。

世の中にはこれまで多数のライトウェイトスポーツが造られてきましたが、造り方に様々なアプローチはあったものの、その本質は、“軽量”で“空力性能に優れ”また“量販車のコンポーネントを流用”して構成したスポーツ車という点にあると思います。 (同時代のホンダS600/800は凝ったパワートレーンを搭載したスポーツ車でライトウェイトスポーツとしては例外的存在)

“ヨタ8”に関しては、その『設計思想;軽量・空力・量産車コンポーネント流用』が非常にダイレクトに具現化されているがゆえに、ライトウェイトスポーツの“原点”的度合も高いのではないか?という気がしました。

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▽ “オリジナルさ”を重視したレストア作業

今回、この“ヨタ8”に試乗させていただいて、ふと頭に浮かんだ言葉。それは、『この個体はトヨタスポーツ800のオリジナル性能や乗り味を極力再現しようとしたレストア車なのではないか?』という事でした。

旧車には色々な楽しみ方があり、KINTOの旧車プロジェクト『Vintage Club』でも、足回りや排気系等に手を加えた“カスタマイズ旧車”もあるのですが、この“ヨタ8”に乗っていて強く感じた事は“オリジナルさ”でした。

外観・内装はほぼオリジナルですし、乗った感じも、その乗り易さや乗心地の良さなど、(“ヨタ8”の新車に乗った経験はありませんが)、“ヨタ8”オリジナルを出来るだけ今の技術で再現しようとレストアされたのではないか? 何となくそんな感じがした“ヨタ8”試乗でした。

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